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幸せの国ブータンが重視する、GNH(国民総幸福量)とは?

森田徹也

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いい旅ブータン 森田徹也

ブータンの子供たち

▲子供たちの未来が何より大切!

GNH(国民総幸福量)の考え方

幸せの国と呼ばれるブータンでは、GNH(Gross National Happiness=国民総幸福量)という独特の指標を用いて、国民の幸福量を計っています。

国民総生産(GNP)や国内総生産(GDP)よりも、国民が感じている幸福量が重要だという考えです。

第三代国王のジグミ・ドルジ・ウォンチュック陛下が、国の発展は国民の幸福度で見るべきだという考えにたどり着き、第四代国王のジグミ・シンゲ・ウォンチュック陛下が、何をもって幸福とするかを定義しました。

文化を守り、人とのつながりを重要視する政策ですが、海外との取引もある程度は行って、経済成長を図ることも必要です。

ですがその際にも、経済的な恩恵と精神的な充足を天秤にかけて、長い目で見て国民のためにならないと判断すれば行いません。

例えば生活を便利にする道路はつくっても、自然を大きく破壊するトンネルはつくらないといった具合で、GNHの考え方は実際に国の政策に反映されています。

プナカにある吊り橋

▲生活のために橋は必須(写真はプナカにあるブータン最長の吊り橋)

精神的な豊かさを重視

GNHを計るために多くの項目が定められていますが、大きな柱となるのは次の4つです。

(1)持続可能かつ公平な社会経済開発
(2)自然環境の保護
(3)伝統文化の保護と振興
(4)良き統治

調査員が各地をまわり、各家庭を訪れて質問をしていくのですが、物質的な豊かさよりも精神的な豊かさに重点を置いているのが特徴です。例えば経済発展の機会があっても、持続可能な開発なのか、社会的に公平なことなのか、という点から判断します。

自国の自然環境と伝統文化に誇りを持ち、良き統治によって大切に守っていくことで、ブータンらしさを失わずに済み、心の豊かさも保たれるという考え方です。

精神面と経済力の両立

また、そのブータンらしさを求めて多くの観光客が訪れれば、観光業が貴重な収入源となって実際的な効果が見込め、精神面と経済面の安定を同時に見込めます。

ブータンの観光旅行には公定料金が設定され、その収入の一部は無料の教育費などの財源となるため、観光客がブータンらしさを求めて旅することでブータンらしさが守られる、という好循環を生みます。

タクツァン僧院を登る観光客

▲タクツァン僧院を登る観光客

ブータンの国民は幸せ?

2005年に行われた国勢調査でブータン国民の97%が「幸せである」と答えた、という話は有名ですが、その後ブータン社会が大きく変わっていることもあり、現在もそのままであるとは限りません。

全てのブータン国民が無条件に幸せであるはずはなく、国民総幸福量の追求は、現在も続いている取り組みです。

ブータンらしさを守りつつ近代的発展を目指すというのは難しい取り組みで、GNHに疑問を持つ声もありますが、ブータンからはこんな声が聞こえてきます。

「経済的には豊かになっても、他者との心の交わりを失い、うつ病になって幸せと言えるのか」
「地球環境を破壊して、安全な食べ物を失い、自然との豊かな触れ合いを失って幸せと言えるのか」

幸福の国と呼ばれるブータンですが、「国民の幸福度向上のため努力する国」という解釈が正しいようです。

永遠の理想郷ではなく、むしろGNHの最大化に向けて変わり続ける国であると言えます。

でも犬は幸せ♪

余談ですが、ブータンの犬たちは他の国に比べて幸せそうに見えます。

あちこちの道端に倒れているのでちょっと心配になりますが、ただ寝ているだけなのでご安心ください。

野良犬ですが、歩き回って食べ物を探さなくてもブータンの人々が施しをくれるので大丈夫なのだそうです。

道端で寝る犬

▲木陰で寝る犬たち

道端で寝る犬

▲建物の陰で眠る犬

こうまで緊張感がないのも考え物ですが、それだけゆっくりした時間が流れているということなんですね。

ただ、人がずっとゴロゴロしているわけにもいかないため、GNHの最大化を目指してブータンは努力をしているのです。