世界でここだけ!3つの宗教が同時に存在する、エローラ石窟寺院群
▲ひたすら岩を掘り下げ、100年以上かけてつくられた!
エローラ石窟寺院はこんな場所
岩山を丸ごと削ってつくられた奇跡の世界遺産
エローラ石窟群は、古代三大宗教「仏教・ヒンドゥー教・ジャイナ教」の石窟寺院が一同に会する、世界で唯一の場所です。
マハーラーシュトラ州のオーランガバードから30km、車で約1時間の場所にあり、5世紀から10世紀にかけて、500年にわたって仏教、ヒンドゥー教、ジャイナ教の寺院や僧院が造られました。
幅2kmに渡って、垂直な崖に34の石窟寺院が掘られており、構成は、向って右側から仏教12窟、ヒンドゥー教17窟、ジャイナ教5窟となっています。
これらは古い順に並んでおり、仏教石窟寺院が一番古く、ジャイナ教の石窟寺院が一番新しくつくられたものです。
それぞれの石窟は隣り合っており、年代もそれほど違わないことから、異なる宗教の石窟が同時につくられていた時期もあったようです。
この時代から今につながる、インドの異なる宗教に対する寛容性がうかがえます。
最大の見どころ!カイラサナータ寺院
エローラ石窟は、アジャンタ石窟とは違って村の近くにあり、石窟の存在が昔から知られていたため保存状態は悪く、残念ながら内部の壁画はほとんど残されていません。
エローラ石窟の一番の見どころは、ちょうど真ん中にあるヒンドゥー教の第16窟、カイラサナータ寺院です。高さは33mもあり、有名な「石の遺跡」であるアンコールワットやエジプトのピラミッドにも匹敵する迫力があります。
しかも、アンコールワットやピラミッドと、カイラサナータ寺院との決定的な違いは、前者は石を積み上げて造った寺院や神殿であるのに対し、後者のカイラサナータ寺院は、岩盤を上から下に掘り下げて造った寺院だという点です。
ですからカイラサナータ寺院には、石の継ぎ目がありません。
全てが一つの岩からできているのです。
カイラサナータ寺院とは、その名の如くカイラス山(須弥山、シヴァ神の棲んでいる山)を模してつくられています。
アンコールワットや、世界最大の仏教遺跡であるインドネシアのボロブドゥール遺跡もカイラス山をイメージして造られた寺院です。
8世紀当時に、どの程度の掘削技術があったのでしょう?
寺院の岩にはノミの跡がたくさん見られます。僧侶たちがノミとツチだけで、150年かけて造ったのです。
信仰の力のすさまじさを感じます。
今も残る、精緻を極めた彫刻たち
▲写真はジャイナ教の彫刻
スケールだけでなく、躍動感溢れる神々の繊細な彫刻が随所に見られます。
本殿の下部には「世界を支える象」と呼ばれる、精巧に彫刻された象が、本殿を囲むように一周して彫られています。
重さに首が傾き、シワが寄っているというリアルさは、とても8世紀の時代の彫刻とは思えません。
ぜひ、ここではたっぷり時間をかけて観光していただきたいです。
カイラサナータ寺院の裏手から、遺跡の全容を見よう
また、カイラサナータ寺院は、本殿や内部の彫刻もすばらしいのですが、時間があったらぜひ、寺院の裏手の岩山を上って全体像を眺めてみてください。
デカン高原の雄大な景色をバックに望む巨大な寺院の迫力は圧倒的で、言葉を失ってしまいます。
また、ここから見ると、巨大な岩が刳り貫かれ、掘り下げられて、寺院が造られたことがよく分かります。
150年の歳月をかけて、ツチとノミだけでコツコツ掘り進め、「世界最大の彫刻芸術・カイラサナータ寺院」を造り上げた僧侶や職人たちに思いを馳せてみましょう。
▲岩山を掘り下げていってつくられたことがよく分かる。圧巻の風景!
インドにおける世界遺産中の世界遺産、このエローラ遺跡は必見です!