赤い城から白き霊廟をのぞむ、世界遺産アグラ城
帝国の栄華を偲ぶ赤き城
古都アグラのヤムナー川岸に横たわるアグラ城は、周囲2.5㎞に及ぶ広大な赤い城塞です。
16世紀から300年余に渡ってインドで繁栄を誇った、イスラム勢力のムガル帝国歴代皇帝の城で、帝国の強大な力と栄華を今に伝えています。
デリーからアグラへの遷都に伴い、ムガル帝国第3代皇帝アクバルによって、1565年に着工し、1573年に完成した強大な要塞です。
その後、第4代皇帝ジャハーンギル、第5代皇帝シャー・ジャハーンまでの、3世代の皇帝の居城となり、赤砂岩でできた重厚な城壁で囲まれるため、「赤い城」と呼ばれています。
しかしながら、デリーにもラール・キラー(レッド・フォート)と呼ばれる「赤い城」があるため、通常、「赤い城」というと、デリーのレッド・フォートを指します。
強者の赤と華麗な白
当時、赤色は帝国の力強さの象徴でした。
対照的に、城内にある多くの建物は純白です。
タージ・マハルを造った第5代皇帝シャー・ジャハーンが自分の好みに合わせて、白大理石を使った華麗な宮殿に仕上げたのです。
公謁殿やモスク、皇帝の寝殿、ハーレムなど、すべてが総大理石で造られた優雅な姿をしています。
上記のように、アグラ城の内部はジャハーンギール廟を除き、ほとんどがタージ・マハルを建てたシャー・ジャハーンによって造営されました。
その後、第6代皇帝アウラングセーブが外郭を造って濠をめぐらせ、現在の要塞の姿となりました。
囚われの塔からタージマハルを
このアウラングゼーブが皇帝の座を狙い、兄弟間の後継者争いに勝つと、父であるシャー・ジャハーンをタージ・マハルの見える、城塞内の「囚われの塔」(ムサンマン・ブルジュ)に幽閉してデリーに移ったのは有名な話です。
シャー・ジャハーンが幽閉されたその場所は、白大理石に宝石を散りばめたシャー・ジャハーンお好みの部屋でした。ただ、彼は死ぬまでの8年間、そこから出ることを許されませんでした。
幽閉されたシャー・ジャハーンが部屋から見ていたのが、川の向こうにあるタージ・マハル。愛する妃の白亜の霊廟でした。
栄華を誇った皇帝は、亡き妃への想いだけを慰めにしながら息を引きとったのです。
現在、シャー・ジャハーンが幽閉されていた小部屋に入ることはできませんが、その隣からヤムナー川をはさんで、タージ・マハルを望むことができ、当時のシャー・ジャハーンの気持ちを偲ぶことができます。
まともに見るならたっぷり時間を
城内は非常に広いため、じっくりと見学する場合、3時間以上は時間を見ていた方がよいでしょう(暑い時期や時間帯は大変なのでご注意ください)。
ムガル帝国の栄華と、そこに隠された骨肉の争い、皇帝の妃に対する愛…、様々な歴史が詰め込まれた「赤い城・アグラ城」。
悠久の歴史をたどりながら観光すると、また一味違った味わいを感じられるかもしれません。