【洞窟内に眠るインド最古の仏教壁画】世界遺産アジャンタ石窟群
渓谷の断崖につくられた、アジャンタ石窟群
1819年、虎狩りに出かけた英国軍士官ジョン・スミスが、逆に虎に追われて逃げるうちにたくさんの洞窟を発見しました。
ワゴーラー川が流れる渓谷の断崖沿いにあり、550mにわたって大小30の石窟で構成される古代の仏教寺院群が、アジャンタ石窟群です。
発見された当時、スミスは渓谷の対岸から、反対側の対岸の断崖に細かな装飾が施された馬蹄形の窓のようなものを見たといいます。それは、明らかに自然に出来たものとは違う、人工的なつくりでした。
▲インド国内で最大級の涅槃仏
保存状態の良い、膨大な仏教壁画
インドの仏教遺跡には、数多くの石窟寺院がありますが、ここアジャンタの石窟寺院は膨大な壁画が描かれていることで有名です。
しかも人里離れた場所にあったために保存状態がかなり良く、デカン高原の大画廊として、芸術学的にも貴重な壁画の宝庫となっています。
▲保存状態は非常に良い
アジャンタ石窟群の造営時期は、前期と後期、大きく2つに分けられているようです。
前期(第1期)は、紀元前1世紀から紀元後2世紀のサータヴァハナ朝時代。
僧侶達の修行や瞑想の場所とされ、装飾も少なく、簡素な造りとなっています。
後期(第2期)は、5世紀中頃から7世紀頃。
この頃になると、仏殿が設けられ、本尊として仏像が設けられ、壁には色彩豊かな壁画が描かれるようになりました。
現存する美しい壁画のほとんどは、仏教美術が隆盛を極めた6~7世紀に描かれたものです。
特に第1窟の蓮華手菩薩は、アジャンタ石窟最高の傑作といわれ、1949年法隆寺金堂の勢至菩薩像に影響を与えたといわれています。
他にも金剛手菩薩や、仏伝記、本生譚(ジャータカ物語)などの説話が色鮮やかに描かれ、絵解き物語となっています。
これら色鮮やかな顔料には、アフガニスタンから持ち込まれたラピスラズリもあり、鮮やかなブルーが非常に印象的な壁画もあります。
ジャングルに1000年埋もれていた、見どころの多い世界遺産
アジャンタ石窟群は仏教の僧侶たちによってつくられましたが、何らかの理由によって7世紀以降、放棄されたようです。
そして、19世紀初頭に発見されるまで、1000年を超える長い間、密林に閉ざされていたのです。
それゆえ、今現在も保存状態が良く、素晴らしい仏教壁画が残されています。
かつて修行中の僧侶が暮らした簡素な部屋なども残る、見どころの多い世界遺産です。
▲仏教寺院なので、ヒンズー寺院とは異なる趣を持つ
アジャンタ石窟寺院の観光ポイント
他のインドの寺院と同様、寺院の入口で靴を脱いで入場します。足の裏は真っ黒になりますので、ウェットティッシュなどを必ず用意しておきましょう。
また、石窟と石窟の間は靴を履いて歩くでしょうから、いちいち足を拭いたり靴を履くのも面倒です。可能ならサンダルを用意すると楽に見てまわることができます。それから、寺院の中は暗いため、懐中電灯があると便利です。
見学の所要時間は約3時間ほど。ゆとりを持ったスケジュールを組みましょう。