映画の中へ旅に出かけよう!遠藤周作の原作【深い河】を紹介

ガンジス河
▲インドといえばガンジス河の沐浴風景が印象的です

なかなか旅に出られない状況ですが、せめて映画の中へ旅をしてみませんか?
おうち時間で旅気分を楽しめる映画をおすすめしていきます。

インドといえば、人々の沐浴風景が印象的なガンジス河が思い浮かぶ人も多いでしょう。
そんなガンジス河を舞台に描かれた遠藤周作の小説で映画化された【深い河】を、何度もインドに訪れているスタッフが紹介。
舞台となったガンジス河についてもご案内します。

遠藤周作の代表作のひとつが映画化、【深い河】のストーリー

遠藤周作の深い河
▲遠藤周作の代表作のひとつ【深い河】

1993年に発刊された遠藤周作の小説が、1995年に熊井啓監督によって映画化されました。

遠藤周作が生涯のテーマとしてかかげていた「キリスト教と日本人」について描いた最終章が、この【深い河】。
実際になんどもインドに訪れて取材を重ね、綿密に構成されたという遠藤周作の代表作のひとつです。

【ネタバレにならないよう簡単にストーリーを説明すると・・・】

さまざまな悩みや思いを抱き、その答えを求めて、また自分の目的を果たすためにガンジス河を訪れるインドツアーに参加した4人と、神を求め続けてガンジス河に流れ着いたクリスチャンの男、この5人を通して、生と死、信仰、愛、人生とはなにかを深く考えさせる映画です。

この5人のストーリーがインドのガンジス河を舞台に繰り広げられるのですが、インド政府の協力によって、日本の映画では初めてインドでの長期撮影が行われました。

そのため、キリスト教やヒンドゥー教の宗教観だけでなく、ガンジス河の沐浴風景やそこでの人々の営みなどがリアルに描かれています。

キャストは秋吉久美子、奥田瑛二、三船敏郎、菅井きん、杉本哲太など。
三船敏郎にとってはこの映画が遺作となりました。

簡単にこの5人の主人公のことを紹介します。

【5人の主人公の背景】

●成瀬
恵まれた環境で自由奔放に生きてきたが、自分の中の空虚な部分は埋められず満たされない、本当の愛を知らない女性。
あるとき、大学時代にもて遊んで捨てたクリスチャンの男がガンジス河にいることを知る。その男の中に自分にはない「なにか」を感じていた成瀬は、その「なにか」を知るために、彼に会いにインドツアーに参加する。

●磯部
家庭を顧みずに仕事に生きてきた壮年の男性。
ガンを患った妻が「自分は必ず輪廻転生して生まれ変わるから、自分を見つけてほしい」という最後の言葉を残して亡くなり、初めて自分に対する妻の静かな愛情を知る。これをきっかけに妻の生まれ変わりだと思われる少女を探すため、インドへ導かれる。

●木口
ツアー参加者の中で、唯一の戦争体験者である男性。
あるとき、ビルマ作戦(インパール作戦)で共に戦った戦友と再会し、戦時中のできごとによって長い間苦しみを抱えて生きてきたことを知る。病気を患って亡くなった戦友と、他の戦友や敵の兵士たちを弔うため、インドへ向かうことを決める。

●沼田
幼いころから動物に心のよりどころを求めていた童話作家の男性。
結核の再発で手術を受け、手術中に一時心停止を起こした際、飼っていた九官鳥が死んでしまったことで、自分の身代わりになってくれたのではないかと思うようになり、あることを目的に野生保護区が多くあるインドへ向かう。

●大津
大学時代に成瀬にもてあそばれて捨てられ、一度は信仰心を捨ててしまうクリスチャンの男性。
再び信仰心を取り戻し、神父を志してヨーロッパへ留学するが、ヨーロッパ人のもつ宗教観と日本人である自分の宗教観の違いから異端者とみなされ、居場所をなくしてインドのガンジス河へ流れ着き、クリスチャンである彼を受け入れてくれたヒンドゥー教徒のために働くようになる。

さまざまな思いを抱いてガンジス河を訪れた4人、それぞれの求める答えは見つかるのでしょうか。

そして、彼らと大津が絡むことによって引き起こされるできごとは、あなたの心になにを残すでしょうか。

映画【深い河】の中で描かれているガンジス河

ガンジス河
▲祈りをささげるため、ガンジス河には日の出前からヒンドゥー教徒たちが集まる

ヒンドゥー教徒にとって母なるガンジス河。
彼らはここで罪を洗い流し、ここで死を待ち、ガンジス河に戻ることを望みます。

身分や宗教などに関係なく、どんな人も、罪人さえも受け入れて、今も昔もただ静かに流れる聖なるガンジス河の深い世界観が描かれています。

この映画の中で、インドに留学経験のある添乗員が参加者に、「インドに訪れた人は、二度と来たくないと思う人と、何度も訪れたいと思う人に分かれる。自分は後者の方です。・・・」というセリフがあります。

私もまさに後者で、初めてのインドで聖なるガンジス河に訪れてから、プライベートも含めて何度もガンジス河に戻るほどインドに魅了された一人です。

が、二度と来たくないと思う人にも、そう思わせる強烈な「なにか」があるのがインドの、特にガンジス河の持つ力ではないかと思います。

また、インドに行くと人生を考えさせられるとか、自分探しの旅先としてインドがあがることがありますが、インドには、特にガンジス河にはそんな思いを受け入れてくれる「なにか」があるのかもしれません。

さまざまな思いを抱いて訪れた人々を受け入れ、ただ静かに流れ続けるガンジス河が【深い河】の舞台のメインです。

映画【深い河】の舞台、ガンジス河はどんなところ?

ガンジス河 朝日
▲ガンジス河の対岸から昇る朝日

日の出に向かって祈りを捧げるために、夜が明ける前からたくさんのヒンドゥー教徒たちがガンジス河に集まってきます。

ガンジス河の沐浴
▲ガンジス河で沐浴をするために集まるヒンドゥー教徒

ガンジス河の対岸から太陽が昇り始め、ヒンドゥー教徒たちが沐浴をするかたわらで、洗濯屋さんが洗濯をしていたり、身体を洗う人や水遊びをする子供がいたり、火葬場ではガンジス河に戻ることを望むヒンドゥー教徒の火葬がされていたり・・・

ガンジス河の沐浴
▲女性はサリーを着たまま沐浴します
ガンジス河の沐浴
▲男性は腰巻をして沐浴します

そんな沐浴風景をみるために、ヒンドゥー教徒たちのそばを観光客の乗る船が行き来しています。

ガンジス河
▲ガンジス河には世界中から観光客が訪れます

太陽が沈むと、アルティというヒンドゥー教の礼拝が行われます。

インドの伝統的な楽器を奏で、祈りを捧げるためのお香が焚かれ、朝の沐浴風景とはまた違った幻想的な光景を観ることができます。

ヒンドゥー教徒たちにとってはありふれた日常なのですが、他では見られない風景が人々を魅了し、世界各国からたくさんの人が訪れているのです。

ガンジス河のアルティ
▲日が沈むとおこなわれるガンジス河でのアルティ(礼拝)
ガンジス河のアルティ
▲朝も夜も祈りを捧げるガンジス河にたくさんの観光客が訪れます

また、ガンジス河のまわりにはたくさんのヒンドゥー教寺院や、祈りを捧げるときに必要なお供え物などを売る商店、【深い河】の主人公たちのように、さまざまな背景の人々がたくさん滞在している安宿などがあります。

沐浴風景を見に世界各国から訪れる人、自分探しに訪れる人、そんな人々を気にすることなく、ヒンドゥー教徒たちの日常が淡々と繰り返されているのがガンジス河の風景なんです。

ガンジス河の裏路地
▲ガンジス河の裏路地

しかし、近年の都市開発により、このヒンドゥー教寺院や商店、安宿などが次々と取り壊され、あの混沌とした独特の風景が観られなくなりつつあります。

何度もガンジス河に訪れている者としては、あの風景がなくなってしまうのはとても残念でなりません。

が、そんな時代の流れにも変わることなく、ガンジス河は全てを受け入れてただ静かに流れ続けてゆくのでしょう。

世界の人々を魅了するインドの日常を感じてください!

テーマとしては重い、ちょっと難しい映画ではありますが、一度観てよく分からなかったとしても、「なにか」はきっと心に残るでしょう。

そして、時間が経ってからもう一度観てみようという気持ちになる、その舞台に一度は訪れてみたいと思える映画です。

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